古本を買うのは、ただ他人によって読み古されてきた本を一時的に所有するだけのことだ。
けれど、傷んだ紙、変色した紙、汚れた紙を見るとそこに何かしら霊的なものがあっても不思議ではない気がする。
ある人の下では、何十回と読み返され最期まで愛された本かもしれないし、またある人の下ではただ本棚に並べられ一度も読まれなかったかも知れない。
病床で読まれた、サンドイッチを食べながら読まれた、電車のなかで読まれた、馬乗りになられながら読まれた、便所で読まれた、どんな風に時間を過ごしてきたかまったくわからない本達。
そんなものが乱雑に山積みされた古本屋にいると、知らないうちになにか大きなものに憑かれていたり、何か奪われていたりしてそうな感覚。
無法地帯の中にクラッキングされる危険性を抱えながら、どこにあるか、そもそもあるかどうかすらわからない情報を探し回ってどんどんと進んでいく感覚。
そんなことを思える場所もなかなかないな。という気持ち込みで神保町古書店散策は楽しかった。
買えなかったけれど現存を確認出来た本もいくつかあって良かった。
しかし、あの街で決め打ちで探し物をするにはそれなりにスキルが必要だ。
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